INTERVIEW
[ Part1 ]
7ORDER
7ORDERが語る、
“ロマン”を形にした等身大の音
まずは、今回のアルバムタイトルが『ROMAN』になった理由から教えてください。
それは先生がバチッと(笑)。
いやいやいやいやいや(照)。
もともとアルバムタイトルの頭文字は“ORDER”の順になっていて。今回は5枚目で、一旦1周目の最後だったんでRで何か探してたんですよ。そしたら先生のところに降りてきて、「ロマンってどう?」みたいな。
俺、そういう名付け親になったことが一回もなくて。まさか念願が叶うとは思いませんでした。みんなでタイトルを挙げてるときに、横でボソッと言ったアイデアを社長(安井謙太郎)が拾ってくれました。
初のネーミング大賞受賞、おめでとうございます!
ありがとうございます(笑)。言葉としては「ロマンス」が正しいんですけど、マネージャーチームからも「大文字でROMANでいいんじゃないですか、可愛いし」って。
英語だと「Romance」や「Romantic」になるんですよね。夢や憧れを表す「ロマン」は和製英語なんですけど、後付けでロマン主義のことも調べたら、理性だけでは測れない感情や直感を大事にする考え方だった。今回のアルバムは自作自演の曲が多いし、今の自分たちの作り方とも重なるところがあるから、『ROMAN』でばっちりだねってなりました。
“ORDER”の順だとこれがラストアルバムになるんじゃないかと不安がるファンの方もいるかもしれません。そこについては?
X(旧Twitter)でもそんなふうにつぶやかれてましたけど、そういうことじゃないんです。これで終わりということじゃない。
7周年と“ORDER”の順番のタイミングがちょうど重なっただけ。区切りじゃないけど、今回のアルバムはかなり達成感があるんです。制作を通じてスキルアップもできたし、次は新たな気持ちで臨めると思っていて。これまでは、7周年をめざそうとか、まだ“E”と“R”が残ってるとか、そういう感じだったんだけど、今回それが完了した。だから、ここからはもっと自由にやれる感覚がありますね。
今回のアルバム制作にあたり、優先していたことは?
等身大でいることと、記憶を記録として残すことです。バンドで作った楽曲をガンガン入れるのは初めてだから、自分たちを飾らずに入れようと。ある種、僕らはアイドル視されているじゃないですか。そういう僕らがリアルなことを書いたり、感情を歌っている面白さ、それが自作自演されてる面白さを大切にしたいなと思っていました。
なるべく素のまま、ありのままを出そうと。
そうです。現場の温度感や、その場でできたものを大切にしていこうと。最初の意図と違っても、その場で出てきたものなら採用していく。今回、プロデューサーで入ってくださった方の存在が大きいんです。
今回のアルバムを作る前に、僕らの先生みたいな人と出会えたんですよ。
それがヤマサキテツヤさん?
そうです。テツヤさんと出会って、そういうアルバムの作り方になったんです。というのも、バンドとしての在り方とか、自分たちをどう表現したらいいのか悩んでいた時期だったんです。5人で『EGG』を作ってみたけど、これまでの道のりもあるし、次は7周年だという中で自分たちをどうアウトプットしたらいいんだろうって。みんな意見は言うけど、どこか「これでいいんだろうか」みたいなムードがあった。そんなときにテツヤさんが「もうそのままでいいんだよ」「今のお前らの感じをそのまま音にしよう」と言ってくれて。それだったら俺は手伝えるよ、と。だから、自分たちのありのままをRECしていくときの確認相手というか、そういう役割で入ってもらえたのが大きいんです。
テツヤさんとの出会いは?
営業部長のモロの飲みです(笑)。
『EGG』に入ってる「Can You?」のレコーディングの日でしたね。めっちゃ時間がかかって夜中になって、1人でメシ食って帰ろうと思っていたらFIVE NEW OLDのドラムのHAYATO君から「ちょっと飲みに来ない?」って連絡が来て。「ちょっと疲れてるから今日は無理です」って断ったんですけど「15分だけでいいから」って言われて。そんなに言うならって行った場所にいたのがテツヤさんでした。
テツヤさんもドラマーだから、2人はドラム繋がりで?
それもあるし、FIVE NEW OLDがテツヤさんを師匠と崇めていて。行ったら、「SAXやってんの? 家どこなの?」「〇〇です」「近所やん。明日サックスやるから取りに来いよ」みたいな。で、翌日に本当にSAXを取りに行って仲良くなって。
展開、早っ(笑)。
そのタイミングでサントリーのタイアップで「GOOD FELLOWS」をカバーする企画があって。そのアレンジをどうしようかと話してたときに、最近仲良くなった人がいて、ってテツヤさんをメンバーに紹介した。そこから僕らの師匠になった感じですね。
フェス出演に向けて準備しているときだったから、フェスで僕らを見てもらえたのも大きいし。
『EGG』ツアーのときもコーチとして入ってもらったりして。その頃からバンドを面倒見てもらってる感じはありますね。
テツヤさんとの出会いで変化したことは?
それまでは、音楽って難しいことをやらなきゃいけないものだという固定観念があったんです。でも、難しいことって何だろうと悩むことも多くて。そんなときにテツヤさんから「自分が思うことを一度やってみな」と言ってもらったことで、すごくシンプルに考えられるようになったんです。今の気持ちをそのまま表現することが、今の自分にとっての答えなのかもしれないなって。「これは自分にはできないかも」と思うことも、一度やってみようと思えるようになった。その過程がすごく楽しいんだということにも気付けたんですよね。
本作ではデジタルとアナログという二面性を打ち出しています。生演奏はアナログ録音にこだわったそうですが、その経緯は?
単純にテツヤさんのスタジオにアナログ機材が揃っていたことが大きいです。あと、これまではDTMで完結することが多かったんですけど、今回はなるべく生演奏で録ろうと。だから、僕が作るデモも1つの指針という考え方。ドラムを生で叩くんだったら、デモを分解して、生で叩いたドラムでゼロから組み直していく。できる限り自分たちの音を入れていくという意味で、アナログにこだわったんです。
その人が弾いたことに意味がある、っていうことですね。
ダンスボーカルとしてやれていることをバンドとしてどう表現するかを『EGG』ツアーの頃からメンバー自身でも少しずつ考えるようになっていたんです。これまでのアルバムもバンドサウンドではあったけど、録音方法や仕上がりはかなりデジタル寄りだった。だから今回のアルバムでは、今自分たちがライブでやっている音に近づける方向にしたら、やりたいことがもっと表現できるんじゃないかと。
二刀流という言葉の考え方に対する変化があった。
これまでの二刀流は「ダンス」と「バンド」だったけど、音としてそれをどう表現するか。そのためには、こういう表現の仕方もあるんだって、アルバムをつくりながら方向が定まっていった感じですね。
今回のアルバム制作で一番大変だったことは?
これだけ期間をかけられたことが今までないんですよ。
実際どれだけかかってるんですか?
構想からで言ったら半年ぐらい。レコーディングは2カ月ぐらいで、去年の11月から今年1月くらいまでです。
けど、“レコーディングするぞ”になるまで、めちゃくちゃ時間かかった曲もあって。「エール」は1回録ったあとにリテイクしたりとか、かなり時間がかかったんです。
時間をかけられるのは贅沢なことだと思うけど(笑)。
そうなんですけど、こだわればこだわるほど、もっとこうしたい、もっとこうやりたいってなっていくので。そういう意味で大変でした。
プレイの話で言うと、僕は「Christmas Music」が一番大変でした。アップライトピアノで録ったんですけど、サスティンペダルを踏む音が入っちゃうんですよね。
“その人が弾いたことに意味がある”なら、その音も入っていいのでは?
そうなんですよね。でも、今までそういうふうに録ったことがないから。これまでピアノはMIDIで録る場合もあったんです。そうすると弾いた音をデータ化できるから少しのミスなら修正できる。でも今回はミスしたら直せない。演奏の手の動きも大変だし、ペダルも意識しなきゃならないから、かなり苦戦しました。
結果、今回はペダルの音も生かしてる?
最終的に生かさざるを得なかったですね。もう音が入っちゃってるので(笑)。
自分たちはデジタルネイティブ世代だから知らないことがすごくあったんですよ。今の話にしても「ペダル、鳴っていいんですか!?」みたいな。それが綺麗にカットされてる音源を聴いてきた世代だから。
一方で、アナログ的な音楽の楽しみ方としては、不完全さや揺らぎを魅力として捉える考え方もありますから。「ミスタッチすら音楽です」みたいな。
僕にはクリエイターとしての顔もあるから、そういうことを教えてもらうと、「そっか、そうなんだ」って。まず気持ちを整理する時間が必要でしたね(笑)。
あと、うどんとの互換性ね。
AirPodsのことです(笑)。
スタジオのスピーカーだとすごく良く聴こえるのに、iPhoneだと全然イメージ違うんですよ。だから、毎回録ったあとにスマホに落として、うどんで聴いて確かめてました。
今までそういう作業は?
してるけど、そこまで差がなかったんです。そもそもデジタルで作ってたから、聴き覚えがある音だった。でも今回はAirPodsで聴くと聴き覚えがない音になる。マジでバランスも変わるんですよ。
イヤフォンだと音がこもって聞こえたり、残響が表現されにくいことがあるから。
そうなんですよね。全部の音がデッドじゃないというか。テツヤさんのスタジオに飾ってあるシンバルが他の音に共振して、何かを録っているときにシャンって鳴ったりするんです。「今の被ってないかな」と思いつつ、「生で録っちゃったしな」みたいなこともあって。今回はそれも良しとする制作だったので、新しい発見がたくさんありました。
ボーカルも曲によってアプローチが全然違って。「こういう曲だから、こういうアプローチをするんだ」みたいな教えもありました。レコーディングした後のミックスで声をどうこうするんじゃなく、そもそも最初に出す時点で変えていこうと。
発声から変えましょうと?
発声というよりタイム感ですね。本当に細かなニュアンスで倍音が変わってくる、みたいなところもありました。
「マイクとは?」とか「そもそもマイクのダイアフラムとは?」みたいな話をされるんです。「マイクのここに声を当てるんだぞ」って言われるのはみんな初めてで。テツヤさんは、自分の声の特徴をできる限り潰さないことをすごく大事にされていたので、全員違うマイクを試したりもしました。当たり前といえば当たり前なんですけど、そういうところでみんな苦戦してましたね。
マイクの指向性によっては、曲ごとにマイクを変えることもありますしね。
逆に言うと、曲に合わせるために声質を調整する作業は今回なかったんです。持ち前の声を録るためにはどうすればいいか、その個性を生かすためにはどうすればいいかをすべて場面で考えていたんです。
後から整えるんじゃなく、最初から人力で頑張る感じですね。
つまり、素材の良さで勝負だと。
だからこそ大変だったけど、面白いし、すごく勉強になりましたね。
レコーディングにかける時間はこれまでで一番長かった?
長かったですね。短くしようと思えばできるけど、今回はそうしなかった。「気分が乗らないんだったらメシ食いに行くか」みたいな進め方もありましたし。それこそモロはサックスを年始またいで録っていて、その様子を見ていたんですけど、「今のテイク良かったのに、どこに違いがあるんだろう」って。
それを言いやすかったんですよね。テツヤさん家がスタジオになっていて使い放題だったんで、気分が乗らなかったら「すみません。ちょっと今日違うかもです」「よし、やめよう」って。だったらこの時間でボーカルを録ろう、みたいな。
あと、みんな、事前に用意してきたのに採用されなくて、みたいな瞬間も結構ありました。
決め打ちに行った日ほど、あまり上手くいかなかった印象がありますね。
そういうときは明確にダメ出しされるんですか?
いや、フィーリングです。自分で違うなと思うときもあるし、テツヤさんもはっきり言わないけど、しっくり来てない雰囲気を感じる。ピッチが正しくても、そこにバイブスが乗ってないと結局いいものじゃないよねっていうことなんです。テツヤさんはもともとそういう音楽畑出身の方だから、今回はその感覚を信じてみようって。
「Christmas Music」と「星とランデヴー」は、ドラムがかなり繊細で、それぞれ跳ね方とかが微妙に違うんです。1日ドラムデイみたいな日があって、その叩き方をテツヤさんに教わっていたら、「ちょっと乗ってきたから、今、『エール』を叩くとどうなる?」って言われて。そのお試し状態の演奏を勝手に隠し録りされてたんですよ。「今のプレイ良かったから、『エール』はこれに差し替えよう」「いや、もう一回やらせてください」「いや、もうこれでOK」みたいな。それでドラムが変わったからボーカルも全部変えようって歌い直した。そういう作り方もまったく初めてでしたから。
ロマン主義を今どきの言葉で言うとバイブスなのかもしれないですね(笑)。
確かにそうかも(笑)。今回のアルバムはバイブスですね。
最後にひとりずつ、今回のアルバムを作り終えた今の気持ちを教えてください。
全曲揃って改めて聴くと、本当にいろんなタイプの曲があって面白いアルバムになったなと思います。きっと聴く人それぞれに「この曲いいな」と思える曲が見つかると思うので、いろんな人に刺さってほしい。個人的には音楽をつくる楽しさを実感できて、めちゃくちゃ音楽人生のターニングポイントになった一枚です。
いい意味でかっこつけてないアルバムですね。テツヤさんの「今かっこつけると後で伸びない」という考えのもと、ちゃんと等身大の自分たちの音を入れることを大事にしたんです。だからこそ、「もうちょっといけたな」とか「もっと経験を積めばいいアプローチができるんだな」とか、そういうことにも正直に向き合えた。そういう意味で成長できたアルバムだなって思います。
5枚目のアルバムなんですけど、僕はこれを“バンド元年”の作品だと思っています。バンドとして初めてアルバムを作った感覚なんです。僕らがバンドなのかどうかは聴いてくれる人たちが決めてくれればいい。でも、そういう気持ちで作ったことだけは伝わってほしい、僕らの今を記録したアルバムです。
自分のコンプレックスやエゴとも、ちゃんと向き合うことができたアルバムになりました。その中で得たものはすごく多かったし、新しいアプローチや表現の幅も広がったと思います。完成度だけでなく、過程にも嘘がない作品ですし、このアルバムを起点にさらに幅が広がっていくんだろうなって。どう聴くかは自由ですけど、今の僕はこうだったということを記録した、日記みたいなアルバムになりました。
学生時代の思い出って、いいことでも悪いことでも、振り返ると不思議といい気持ちになるじゃないですか。このアルバムも、そんな感覚に近い作品だと思います。今の自分たちを包み隠さず、何のフィルターも通さずに閉じ込めたからこそ、時間を超えて聴けるアルバムになったんじゃないかなって。だからファンクラブ盤のデザインもタイムカプセルをイメージしたんです。何年後かに自分がもっと大人になったとき、きっと聴き返したくなるアルバムなんじゃないかなって思います。
Interview & text / Takashi Inomata